毛づくろう猫の道しるべ
 まず、俺の母親の事から話した方がいいだろう。

 俺の母親は、さっき下で会ったからわかるだろうけど、かなり派手な風貌をしている。

 あの様子から察することができるように、俺の母は水商売というのをやっている。

 だけど俺はそれが自慢でもあるんだ。

 だって、俺の母はものすごくやり手でキャリアウーマンに匹敵するくらい有能だから。


 俺は母のお蔭で何も不自由などしたことがない。

 寧ろ金持ちのおぼっちゃまっていってもいいかもしれないくらいだ。

 それぐらい恵まれてるんだ。


 母はいわゆる高級クラブのママという存在で、そこは企業のトップ、政治家、芸能人と言った奴らが出入りするところだ。

 そういう人達と常に付き合いを持っているんだ。


 饒舌、聞き上手、人を見抜く才能も添えて、抜け目なく常に目を光らせて、物事を見ているような人だ。

 だから、お金の稼ぎ方もよく知っている。

 サイドビジネスに不動産もいくつか持っていて、このマンションもその一つなんだ。


 いくら世間が水商売って言ったところで、母のようなビジネスはそう簡単にできるもんじゃない。

 だけど母はトップに立つだけ、敵も多かった。

 そういうのに充分注意していたけど、その息子が足を引っ張ってしまったんだ。

 それが俺って訳だけど、俺は母親が力を持ってるとわかっていたから、少し高飛車になっていた。

 俺も同じくらいの権力を持ってると勝手に思い込んでいたんだ。

 それが虎の威を借る狐ってもんだ。

 それで調子に乗って、粋がってたんだがそれが一番ひどかったのが去年の話ってことだ。


 高校合格に安心して、派手に髪を染めて、自分のバックに権力を持つものが居ることを自慢していた。

 そういうのに反応する女もいてな、俺は女に不自由しなかった。
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