毛づくろう猫の道しるべ
調子こいて、他校の女子まで手を出して、それがヤバイ奴の彼女だったんだ。
だけど、俺の方がレベルが上だと思ってたから、俺は受けてたったが、実際、そいつらは係わったらいけない奴らだったんだ。
俺も結構、喧嘩には強い方だと思ってたけどさ、そいつらはバックに警察の世話になるやつがいて、正真正銘の悪だった。
そいつらに目を付けられて、俺も引くに引けずに虚勢をはってたけど、ある日ボコられて、入院沙汰だ。
警察も係わるくらいの事件になっちまって、当然学校は対応に困惑した。
普段の俺の生活態度も悪かったし、被害者とは言え、挑発したのが原因と位置づけられて、厄介な生徒だと見なされた。
学校の名誉にも傷がつくし、俺の母親の水商売という部分だけを見て、世間の体裁から、そういう生徒だから問題を起こしたって思われがちだった。
酷い怪我だったから、一ヶ月以上学校に通えなくなり、欠席日数もやばかった。
学校側はこのまま自主退学を望んでるのがヒシヒシと伝わってくるし、人生初めての敗北を味わって、俺はどん底だったんだ。
母も俺が馬鹿なことをしたもんで、俺についての変な噂をその辺りのクラブの界隈で流された。
俺は生まれた時から父親は側にいなかったんだ。
母子家庭ってやつだけど、その父親が誰だかわからないって言う怪しげな存在だ。
それで、俺が巻き込まれた事件を利用して、放蕩息子やら、母は誰々と不倫したやら、権力者の妾やら、地位を揺るがそうと貶めようとする噂が飛び交った。
それも神経が磨り減るには充分な理由だったけど、瀕死の俺の大怪我を心配しすぎて過労で倒れてしまった。
ああいう世界はイメージが大事だから、ちょっとの噂で経営にも響いてくる。
それでも、母は負けなかったし、とにかく自分には自信があって、その息子も立ち直るという確信も強く持っていた。
でも俺はあの時、体も自由に動かず、打ちのめされて全てが嫌になっていた。
だけど、草壁や櫻井、ついでに出渕もだが、また学校に早く戻って来いと俺を励ましてくれた。
最初は心閉ざしてたけど、怪我が治って動けるようになると少し気が楽になってきた。
そんな時、ある人たちが俺の病室を訪ねて来たんだ。
今まで全く会った事もない人だった。
やせ細った長身の男性が妻と思われる人と俺よりも随分年上そうな娘に支えられて、俺の病室に入ってきた。
俺も面食らったけど、その三人も戸惑った表情で俺をじっと見ていた。
「晴人(はるひと)君……」
やせ細った男性が俺の名前を呼びながら、目に薄っすらと涙を溜めていた。
「はい、何か?」
その人は俺の側に寄って俺の手を突然握ると「ありがとう」と礼を言った。
だが、俺には思い当たることは何一つなかった。
だけど、俺の方がレベルが上だと思ってたから、俺は受けてたったが、実際、そいつらは係わったらいけない奴らだったんだ。
俺も結構、喧嘩には強い方だと思ってたけどさ、そいつらはバックに警察の世話になるやつがいて、正真正銘の悪だった。
そいつらに目を付けられて、俺も引くに引けずに虚勢をはってたけど、ある日ボコられて、入院沙汰だ。
警察も係わるくらいの事件になっちまって、当然学校は対応に困惑した。
普段の俺の生活態度も悪かったし、被害者とは言え、挑発したのが原因と位置づけられて、厄介な生徒だと見なされた。
学校の名誉にも傷がつくし、俺の母親の水商売という部分だけを見て、世間の体裁から、そういう生徒だから問題を起こしたって思われがちだった。
酷い怪我だったから、一ヶ月以上学校に通えなくなり、欠席日数もやばかった。
学校側はこのまま自主退学を望んでるのがヒシヒシと伝わってくるし、人生初めての敗北を味わって、俺はどん底だったんだ。
母も俺が馬鹿なことをしたもんで、俺についての変な噂をその辺りのクラブの界隈で流された。
俺は生まれた時から父親は側にいなかったんだ。
母子家庭ってやつだけど、その父親が誰だかわからないって言う怪しげな存在だ。
それで、俺が巻き込まれた事件を利用して、放蕩息子やら、母は誰々と不倫したやら、権力者の妾やら、地位を揺るがそうと貶めようとする噂が飛び交った。
それも神経が磨り減るには充分な理由だったけど、瀕死の俺の大怪我を心配しすぎて過労で倒れてしまった。
ああいう世界はイメージが大事だから、ちょっとの噂で経営にも響いてくる。
それでも、母は負けなかったし、とにかく自分には自信があって、その息子も立ち直るという確信も強く持っていた。
でも俺はあの時、体も自由に動かず、打ちのめされて全てが嫌になっていた。
だけど、草壁や櫻井、ついでに出渕もだが、また学校に早く戻って来いと俺を励ましてくれた。
最初は心閉ざしてたけど、怪我が治って動けるようになると少し気が楽になってきた。
そんな時、ある人たちが俺の病室を訪ねて来たんだ。
今まで全く会った事もない人だった。
やせ細った長身の男性が妻と思われる人と俺よりも随分年上そうな娘に支えられて、俺の病室に入ってきた。
俺も面食らったけど、その三人も戸惑った表情で俺をじっと見ていた。
「晴人(はるひと)君……」
やせ細った男性が俺の名前を呼びながら、目に薄っすらと涙を溜めていた。
「はい、何か?」
その人は俺の側に寄って俺の手を突然握ると「ありがとう」と礼を言った。
だが、俺には思い当たることは何一つなかった。