毛づくろう猫の道しるべ
 架からそれを受け取り、私は抱きしめた。

 悲しいことには変わりないが、昨日ほど涙が出なかったのは、少しだけブンジの死を受け入れたからだった。

 全ては近江君のお蔭だった。

 それなのにお父さんときたら酷すぎる。

 私はブンジの遺骨を抱き、近江君のヘルメットを持って自分の部屋に篭った。


「千咲都、まだ話は終わってない」

 父が追いかけてきて、ドアのに向かって何か言ってるが、私はドアを押さえて入れないようにして無視をした。

 父はやがて諦めたが、お互いしこりは残ったままどちらも譲らず、喧嘩は長期化しそうだった。

 普段は私の肩を持つ母ですら、今回は父の味方となっている。

 架は巻き込まれたくないとどちらの肩も持たなかった。

 弟なんだから姉側につけと思うと、不満で弟にも腹が立つ始末だった。


 怒ってると、ブンジへの悲しみが分散されてしまった。

「ごめんね、ブンちゃん」

 ブンジの骨壷が入った骨袋を抱きながら、ブンジの事を思う。


 近江君にもブンジを会わせたかった。

 一度でいいから本物を見て欲しかった。

 近江君のバイクのヘルメットとブンジの遺骨を交互に見つめたその時、私は違和感を覚え、なんだか暫く動けなかった。
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