毛づくろう猫の道しるべ

 朝の父とのやり取りは、とてつもなく大事な事を気づかせてくれた。

 満足が行くまで話し合う。

 自分の納得が相手にも伝わらなければ、そこに妥協点は発生しない。

 考え方が違うからお互いの事を理解した上で譲歩し、そこに合った答えを導き出す大切さ。

 どちらかが一方我慢すれば、それは対等ではなくなり、強制になってしまう。

 表面上受け入れたと見せかけても、中身がそうじゃないとわだかまりだけが溜まって、本心とは違う虚構だけが膨れ上がる。

 そうなると関係は崩れ、決して接点がないままに、上辺だけになってしまう。


 まさにそれは、私と希莉の関係だった。


 希莉は早くからそのことに気がついていて、私の態度を疑っていた。

 私がすぐに謝る事も、我慢していることも、何も言い返さないことも、希莉にしてみればそれは友達じゃなかった。

 私も表面上は何もない振りしても、その下にわだかまりを膨らませていた。

 私は一杯我慢しているのに、相手はしてくれない。

 なんともお門違いの言い分だろう。

 希莉は私と対等でありたかった。

 フリをして嘘を重ねて欲しくなかった。

 それが友達だから。

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