毛づくろう猫の道しるべ

10

 夏休みはあっと言う間に駆け抜け、二学期が始まった。

 すぐに催された席替えと共に、近江君の席が消えた。

 常にいつも一人で座っては、本を読んで勉強をしていた近江君。

 痕跡が消えても、私だけはその姿が目に焼きついていた。


 たまに行く図書室も、本棚の前で近江君が立っている姿を思い出す。

 つい感情が溢れて涙が出てきてしまう。

 どこか感傷的に浸り、それに自分が酔っているようにも思えて、私は頭を振って気を取り直す。


 それから気を紛らわそうと本を見ていたら、何気に手にした本にとても魅了された。

 私はそれをすぐさま借りた。

 そして、後に同じ本を買うことになってしまった。

 その本に載っていたことを、自分でもやりたいと思い、本に書いてあった通りに色々と計画を進める事にした。

 それもまた一つの目標として、うかうかしていられないチャレンジ精神のように、常に前を向いていられる気分になった。

 再び近江君と会うためにも、自分の目標にピッタリと当てはまるちょっとしたプロジェクトだった。

 できる!

 その気持ちを持ち、私は着々と近江君に再開する準備を始めだした。


 時はどんなときにも流れていく。

 周りも徐々に変化していく。

 二学期は運動会、文化祭があり、クラスみんなで一致団結しなければならないイベントが登場した。

 もしここに近江君がいたら、どんな風に参加していたんだろうと練習や準備をしながら思ってしまうのは、自然な流れだった。

 私が近江君の事を考えてボーっとする度、希莉と柚実が思いっきり絡んでからかってくる。

 でも二人の心遣いは嫌じゃなかった。

 二人と話しているとやっぱり楽しいし、自分の事第一に行動できる。

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