毛づくろう猫の道しるべ
「ブンちゃん。クラスの近江君って、よくわからない人なんだ。いつも一人なんだけど、もしかして虐めにあって、ボッチなのかな」

 ブンジは私の顔を一瞬見つめるも、腕の中にすっぽりとはまり込んだまま、気持ちよさそうに喉をゴロゴロさせて目を細めていた。

 そんなとき、近江君の事を考えすぎて、入学式で撮ったクラス写真にどんな風に写っているのか気になった。

 ブンジをベッドに下ろして、机の引き出しから封筒を取り出す。

 注文後受け取ってからそのままにして保管していた。

 中から写真を引っ張り出してみるや否や、一番に自分の姿が目に入った。

 緊張した面持ちで澄ましている顔だが、その胸の奥には気合も入っているのが感じられる。

 今はすっかり慣れてきて、だらけてしまってるけど、この当時の自分の顔を見るとなんだか気恥ずかしくもあり、笑ってしまう。

 そして希莉と柚実を次に見た。

 やっぱり二人は集合写真の中でも一際目を引いているように思う。

 この二人と友達だと思うと自分も誇らしげになってしまう。

 それから近江君を探した。

 どこにいるんだろうと、端から順番に男子生徒を一人一人見ていった。

 ところが、近江君の顔がどこにも見当たらなかった。

「えっ?」

 思わず声が漏れた。

 もう一度最初から見直したが、やっぱり近江君はどこにもいなかった。

 うそ! 入学式に来なかったの?

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