毛づくろう猫の道しるべ
 あの時、初めてみる顔ぶれに誰が居たとか居なかったとか全然覚えてないし、もしかしたら写真が嫌いで隠れてたのかもしれない。

 いつも一人でいる以上、近江君ならやりかねないような気がする。

 やっぱり変わった人なんだ。

 私が近江君の事に気を取られている時、ブンジが、私の足に纏わりついて頭をこすり付けてきた。

 私は写真を机に放り投げ、ブンジを抱き上げた。

「ブンジ、もしかしてヤキモチ? ブンちゃんが一番大好きだからね」

 ブンジの喉のゴロゴロがまた鳴り出した。


 それから後、中間テストがとうとう始まってしまった。

 好き好んで入った私立の高校だし、それなりにお金もかかってるから、ここは頑張らないといけない。

 この学校を選んだのも、設備が整っていて、校風も時代に合わせた自由な雰囲気があり、とても気に入ってしまったからだった。

 交換留学生もやってきたり、海外にも姉妹校があったりと派手な部類なのも、国際感覚に飛んでおしゃれに思えた。

 やはりある程度のお金がある家庭の子供達じゃないと通えないところがある。

 うちも、父の仕事のお蔭で正直裕福のレベルではあると思う。

 その代わり、父はそれなりの役職を貰い、時折海外に出張したりして、常に仕事で忙しく、家族のために頑張ってくれている。

 だからこそ父のお金を稼ぐ苦労を無駄にできず、気を抜くわけにはいかなかった。

 そこは娘としてそう思うのが当たり前の感覚だと思っている。

 勉強が特別好きっていうわけではないが、怠ける事はしたくないこだわりがあり、コツコツとやる方だと思う。

 苦手な科目もあるけれど、国語と英語はそこそこ点数は取れるかもとちょっと自信を持ったりする。

 後は運もあるが、赤点だけは絶対取らないようにしたい。

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