毛づくろう猫の道しるべ
 テスト中はちょっと苦しい寝不足の日々だったけど、実施されてる最中は無我夢中でやるだけの事をやり、気がついたら終わっていたという感覚だった。

 終わったら、ほっとしたのも束の間、次結果が返ってくるのが怖かったりもする。

 でも、私はまあまあといったところで、教科によってばらつきはあるけれど普通よりかは上くらいの成績を修めたと思う。

 とりあえずはクリアーしたから安泰だった。

 そんな時、ほとんどの先生が近江君の答案を返しながら褒め称えているのが目に入った。

「近江、頑張ってるじゃないか」

「よく頑張ったわね。えらいわ」

 などと、先生から常に声を掛けられていた。

 クラスでトップなのかもしれない。

 やはり、休み時間一人で居るのは伊達じゃなかった。

 本当に勉強しているのがこれで証明された。

 休み時間も勉強するほど、近江君は本物のがり勉だった。

 先生からの賞賛、いい成績を収め、文句なく勉強ができるとわかってから、私の中で近江君の存在がまた違うものに見えてきた。

 だけど、どこか見かけと話方が、ちぐはぐしているように見えるのは、私があの短い髪型が似合ってないと思っているからだろうか。

 近江君はたまに私とすれ違うと「ブンジは元気か」とか訊いてくる。

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