毛づくろう猫の道しるべ
 ブンジは暫く出窓の部分に座っていたが、用事が済んだとでも言わんばかりにまたソファーに戻っては、一度あくびをしてからから丸まりだした。

 私はバイクの人が投げたものが気になり、玄関先へ出ていった。

 そこにはビニール袋に包まれた物が横たわっていた。

 それを拾い上げ、また家の中に入っていく。

 明るいところで見れば、それは私の父が定期購入している英字新聞だった。

 こんなに朝早くから大変な仕事だ。

 毎日朝早く配達する人の気持ちを想像しながら、その新聞をダイニングテーブルに置いて、私はドライヤーを求めて洗面所へと向かった。

 鏡に映る自分の姿。

 それを見つめていると、まるで戦に挑むように意気込んで、体に力が入ってしまった。

 力んだ手で、ドライヤーのスイッチを入れれば、熱風を送る音がうるさく耳に届き、益々心ざわめく。

 どうかこの日が失敗しませんように。

 そう願いながら、ドライヤーから出てくる熱風を髪に向け、私の心も熱くなっていた。

 何事も最初が肝心とばかりに、高校生活が始まる初日、私はどこか気が抜けなかった。

 高校生になったこの日、今までの中学生活を振り返る。
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