毛づくろう猫の道しるべ
 欠伸が何度も出ては、目じりに涙が溜まっていく。

 春の優しい風が、ひんやりとさせる。

 それを拭いながら、目許をこすってるうちにとうとう学校の前にやってきた。

 その存在感はその時神聖なものに見えた。

 ドキドキとして緊張が高まり、一瞬立ち止まってしまう。

 同じように一緒に歩いていた母も私に合わせて立ち止まり、しっかりと付き添ってくれていた。

 私は母と顔を合わせる。

 そしてお互いの笑みが溢れるようにこぼれていった。

 ぞろぞろと新しい制服に包まれた新入生が集まって来る。

 私もぎこちなくその一部となってやがて門に吸い込まれていった。


 出席番号順に名前が書かれたクラス表が、校門を入ってすぐの人目がつく場所に張り出されていた。

 私と同じ新入生がひしめき合ってそれらを見ている。

 その保護者達も自分の子供の行く末を心配しながら、粗相のないように遠巻きにその様子を見ていた。

 私の母もここからは一人で行きなさいと、私に笑顔を向けた。

 それを合図に、私も新しく入学した生徒達に紛れて、自分の名前を探しに行った。

 一年三組のところに、私の名前、遠山千咲都を見つけた。
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