毛づくろう猫の道しるべ
 入学するから、そこにあって当たり前だけど、改めて自分の名前を見つけた事に少しほっとするものがあった。

 これからここに三年間通う。

 また新たに、頑張らねばというやる気が、腹の底から湧き上がっていた。

 周りを見れば、手を握り合って同じクラスになれた事を喜んでいるものや、すでに仲良くなっている人達がいた。

 この人達の中にすんなりと入っていけるのだろうか。

 焦りにも似た不安が押し寄せた。

 周りの人達はどんな心境なのだろうか。

 私は、それぞれの生徒達をぐるりと見渡しながら、指定の場所へと向かった。

 入学式が始まる前は一度教室に集められる。

 その間、保護者達は一足早く式が始まる体育館へ行き、セレモニーが始まるまでそこで待機させられた。

 母も見知らぬ人に囲まれて、どうしていいのかわからない不安があったのかもしれない。

 静かに体育館へ向かう足取りがなんだか覚束ない。

 それ以上に、私も不安と怖気るような思いの足取りで教室に向かった。
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