毛づくろう猫の道しるべ
「しかし、遠山さんすごいな。あんなかっこいい人に自ら近づけるなんて。私なんて絶対できない」

 かっこいい?

 そんな事意識せず、あの時は手紙の事しか頭になくて、まじまじと顔の評価をする余裕などなかった。

 あれは切羽詰って追い込まれてたから、藁をも掴む気持ちで助けてくれる人にすがりついただけだった。

 すでに手紙の問題は終わってるし、草壁先輩ともこれ以上係わり合う必要もないから、そっとして欲しいが、みんなからすごいすごいと言われチヤホヤされ続けたらそんなに悪くなくなってくるのが恐ろしい。

 少しだけの優越感。後からじわじわとくるものがあった。

 自分でもあちこちに気持ちが揺れて、安定してないのは承知だが、一体私はどこへ行こうとしているのだろうか。

 お弁当を食べ終わると、希莉は一人でどこかへ行ってしまい、柚実は適当に周りに居た人と過ごしていた。

 私はこれ以上、草壁先輩の事を訊かれるのが嫌で、隠れる思いで図書室に行った。

 なぜそこに行ったのか。

 そこにしか行くところが思いつかなかったが、近江君がいるような気もしたのも確かだった。

 会いたいというよりも、会えたらブンジの画像を見せたいという思いもあったので、ポケットにスマートフォンを忍ばせた。

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