毛づくろう猫の道しるべ
私が下級生で生意気に思われて、気に食わないのだろう。
どうしよう。
せわしく瞳が揺れ動き、視線が自分でもうろちょろして動揺しているのがよくわかる。
「とにかく知らせたからね。必ず行ってよね。そうじゃないと、関係ない私にまでとばっちりがきちゃうんだから。こっちもいい迷惑よ」
捨て台詞を吐いたように、思いっきり歪めた顔を隠しもせず私に向けた。
そんなこと言われても、こっちだっていい迷惑だ。
まさか、こんなに事が大きくなるなんて思ってなかった。
それだけ草壁先輩はすごい存在で、私なんかが気易く声をかけてはいけなかったに違いない。
呆然としている私の事など、知った事ではないと、メッセンジャーは私を置き去りにしてどこかへ消えていった。
お互いの名前すら知ることなく、今後も赤の他人のまま、例え廊下ですれ違っても挨拶することもないだろう。
これ以上係わりたくないという嫌な印象が、あの人の心に刻まれたに違いない。
まるで私は疫病神とでもいいたげに。
また新たな問題が頭上に降りかかり、自分の高校生活がめちゃくちゃに荒らされる。
こういう時、希莉や柚実に助けて欲しいのに、二人と気軽に話せなくなった事がとても悲しい。
結局誰にも言えないままに、私は呼び出された場所へと向かった。
校舎の裏というくらいだから、あまり一目につかない場所なのは確かだった。
学校の一番端っこに位置するようなひっそりとした場所。
飾りのように低木が連なった垣根。
その後ろにも一般通りと区分けするフェンスが並んでいる。
すぐには逃げられない圧迫感がそこにはあった。
そして五人の女生徒がまさに校舎の裏、窓がないコンクリートの壁の前に集まって固まっていた。
私が近づいてくるのがわかると、じっと私の顔を気に入らなさそうな目つきで睨みつけていた。
思わず身がすくんでしまうが、必死で足を動かして側に寄る。
側まで来た時、どこかで見たような顔があり、それが今日図書館で近江君と一緒に居たときに出くわした人だと気がついた。世間は狭い。
なんだか事が大きくなりそうで、私は嫌な予感で身震いしてしまう。
私が適当な距離を取って立ち止まると、上級生のお姉さまたちの睨みに一層磨きがかかった。
じめっとした湿気を含んだ空気、雨は降ってないが雲が垂れ込んで天気は悪い。
むしむしする不快なコンディションの中、私は上級生と対峙する羽目になった。
一応殊勝にしゅんと猫を被るが、心の底では恐怖心と腹立たしい気持ちが交じり合った複雑な心境だった。
こんなのフェアじゃないし、私だって不可抗力でああなっただけに、納得がいかなかった。
とりあえず成り行きを見ていた。
「あなたね、一年生の癖に草壁君に近づいてどういつもり?」
その中でも一番のリーダー役なのだろう。
目が細いせいか、とても目つきが悪く見えた。
「別に近づいたとかじゃなくて、偶然そうなっただけなんです」
こんな人達に説明したところで、理解も何もないのが見えている。
一体私にどうしろというのだろう。
「草壁君には彼女がいるって知ってるの?」
どうしよう。
せわしく瞳が揺れ動き、視線が自分でもうろちょろして動揺しているのがよくわかる。
「とにかく知らせたからね。必ず行ってよね。そうじゃないと、関係ない私にまでとばっちりがきちゃうんだから。こっちもいい迷惑よ」
捨て台詞を吐いたように、思いっきり歪めた顔を隠しもせず私に向けた。
そんなこと言われても、こっちだっていい迷惑だ。
まさか、こんなに事が大きくなるなんて思ってなかった。
それだけ草壁先輩はすごい存在で、私なんかが気易く声をかけてはいけなかったに違いない。
呆然としている私の事など、知った事ではないと、メッセンジャーは私を置き去りにしてどこかへ消えていった。
お互いの名前すら知ることなく、今後も赤の他人のまま、例え廊下ですれ違っても挨拶することもないだろう。
これ以上係わりたくないという嫌な印象が、あの人の心に刻まれたに違いない。
まるで私は疫病神とでもいいたげに。
また新たな問題が頭上に降りかかり、自分の高校生活がめちゃくちゃに荒らされる。
こういう時、希莉や柚実に助けて欲しいのに、二人と気軽に話せなくなった事がとても悲しい。
結局誰にも言えないままに、私は呼び出された場所へと向かった。
校舎の裏というくらいだから、あまり一目につかない場所なのは確かだった。
学校の一番端っこに位置するようなひっそりとした場所。
飾りのように低木が連なった垣根。
その後ろにも一般通りと区分けするフェンスが並んでいる。
すぐには逃げられない圧迫感がそこにはあった。
そして五人の女生徒がまさに校舎の裏、窓がないコンクリートの壁の前に集まって固まっていた。
私が近づいてくるのがわかると、じっと私の顔を気に入らなさそうな目つきで睨みつけていた。
思わず身がすくんでしまうが、必死で足を動かして側に寄る。
側まで来た時、どこかで見たような顔があり、それが今日図書館で近江君と一緒に居たときに出くわした人だと気がついた。世間は狭い。
なんだか事が大きくなりそうで、私は嫌な予感で身震いしてしまう。
私が適当な距離を取って立ち止まると、上級生のお姉さまたちの睨みに一層磨きがかかった。
じめっとした湿気を含んだ空気、雨は降ってないが雲が垂れ込んで天気は悪い。
むしむしする不快なコンディションの中、私は上級生と対峙する羽目になった。
一応殊勝にしゅんと猫を被るが、心の底では恐怖心と腹立たしい気持ちが交じり合った複雑な心境だった。
こんなのフェアじゃないし、私だって不可抗力でああなっただけに、納得がいかなかった。
とりあえず成り行きを見ていた。
「あなたね、一年生の癖に草壁君に近づいてどういつもり?」
その中でも一番のリーダー役なのだろう。
目が細いせいか、とても目つきが悪く見えた。
「別に近づいたとかじゃなくて、偶然そうなっただけなんです」
こんな人達に説明したところで、理解も何もないのが見えている。
一体私にどうしろというのだろう。
「草壁君には彼女がいるって知ってるの?」