毛づくろう猫の道しるべ
「お前ら、千咲都ちゃんに何してるんだ?」

 全員が凍りつき、目だけは大きく見開いて、その声の主を凝視していた。

 なんと、今話題になっているご当人、草壁先輩のご登場だった。

 本人が現れたことで、強気だった五人の女生徒たちの勢いが急に萎れてしまい、突然取り乱して右往左往しだした。

 誰もが口を開けたまま言葉につまり、顔面蒼白でうろたえている。

 さっきまでの威勢はどこに行ったと突っ込みたくなるほど、狼狽していた。

「お前ら、もしかしたらまた櫻井の事で、余計なことしてるんじゃないだろうな。いい加減にしてくれないか。俺と櫻井はなんでもない。うんざりだよ」

 いきなり草壁先輩が怒り出し、五人は一気に小さくなっている。

 草壁先輩の怒りで震え上がった先輩の一人が、なぜか私に助けを求めるように視線を向けた。

 それに戸惑うも、今後の事を考え咄嗟に私は計算高々に行動してしまう。

 それが後で役立つなんて補償もされてないのに、結局は事を大きくしたくない防衛が出てしまった。

「あっ、あの、草壁先輩、あの、なんでもないんです。私の方がこの方達に色々訊いてただけなんです。ねぇ、先輩方」

 一番リーダーっぽかった細い目の人を見たけど、その人は完全に声を失っていた。

「千咲都ちゃん、嘘をつかなくてもいいって。こういうこと、これに始まったことじゃないんだ。こいつら、いつも櫻井と俺をくっつけようとしてくるんだ」

 一体どういうことなんだろう。

 草壁先輩が目の前の五人を睨みつけている。

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