毛づくろう猫の道しるべ
「まさにその通り。側にいたから、友達のように気さくに喋っただけで、その女の子と付き合ってる事にされたり、それで周りの女友達が団体で後押ししてきてさ。そいつらがうるさいから、俺は他の女の子と喋っちゃいけないようにされるし、ことあることにやりにくいのなんの。またクラスの友達に言えば、女子に構ってもらえるだけ有難く思えやら、もてて羨ましいやらで、俺の事真剣に考えてくれる奴なんていないんだ」
「もしかして、サクライさんって方が原因?」
「えっ、そ、そうなんだ。部活のマネージャーでもあるんだけど、普通に良く話す間柄だったのに、仲がいいとか周りが持ち出したせいでさ、彼女その気になってしまったんだ。でも俺はそういうつもりなかったし、勝手に口実つくられた感じ。ちゃんと否定したんだけど、まだ周りがうるさく騒いでるっていう訳……」
草壁先輩の瞳はどこか陰りを帯びて、虚空を仰いでいた。
最後に下唇を少しだけ噛んで顔を歪めて言いにくそうにしていた。
「でも、先輩もてますし、一年の女子の間でもかなりキャーキャー言われてますよ」
「参ったな。一体俺の何がいいというのか」
草壁先輩は困り果てた顔をして、手持ちぶたさに頭を掻いていた。
そこには謙遜もはいってるのかもしれないが、実際やはりかっこいい風貌であり、面倒見もよく優しいし、もてるだけの要素は充分に備えている。
でもそれを鼻にかけない気さくさが伺え、ピンチを何度も助けてもらったお蔭で私もどこか心許してしまう。
目の前で自分の悩みを話している姿も、意外な面として緊張感が抜けていくようだった。
「草壁先輩のその飾らない態度や、親しみ易いところはやっぱり素敵だと思います」
その時、草壁先輩の動きが急に止まり、ハッとした表情を私に向けた。