スワロウテイル
「K大附属高校? 五條、頭いいんだな。俺でも知ってる名門校じゃん」
結局、修は五條に校内を案内することにした。
この高校は使ってない旧校舎があったりして分かりづらいからというのと、単純にもう少し五條と話をしてみたくて修の方から声をかけた。
「うーん、どうだろう。俺は小学校からの持ち上がり組だからなぁ。 高校から入る奴は確かに優秀だけど」
「じゃ、すげー金持ちなのか。 どっちにしてもすごいな」
体育館へと続く渡り廊下を並んで歩きながら、修は賞賛の眼差しを向けた。
せっかくの昼休みだが寒さが厳しいため生徒達は暖房の効いた教室に籠っているんだろう。廊下にもグラウンドにも人はまばらだった。
育ちが良さそうだとは感じていたけど、小学校からK大附属とは筋金入りのお坊ちゃんだ。本人は謙遜しているけど、頭だって良さそうだ。
となれば、当然気になるのは・・・
「なんで、こんな田舎の公立高校に転校なんかしてきたんだ? しかもあと1ヶ月で進級なのに」
小さい町だから転校生自体が滅多に来ないが、3月のこの時期っていうのは更に珍しい。
「うん。ちょっと事情があって」
五條は短く言って、視線を逸らすように目を伏せた。
気を悪くした風でもなさそうだが、あまり積極的に語りたい事情ではないらしい。修は空気を読んで、話題を変えた。
「部活は? なんか入んないの?」
修がそれ以上追求しなかったことに五條はほっとしたようで、僅かに表情が和らいだ。
「前の学校ではサッカーやってたけど、もういいかな。春から受験生になっちゃうし。 相沢は部活は?」
「俺はバスケ部。つーか、修でいいよ。 みんなそう呼ぶから、苗字で呼ばれんのって逆にくすぐったい」
苗字で呼ばれるのもくすぐったいが、こういう会話もこっぱずかしい。
ムズムズする首筋を押さえながら、修は早口に言った。
「わかった、修」
「おう」
修は照れをごまかすように、大きな声を返した。
体育館では何人かが食後の運動を楽しんでいるようで、はしゃいだ笑い声とバタバタと走り回る足音が漏れ聞こえてきていた。
結局、修は五條に校内を案内することにした。
この高校は使ってない旧校舎があったりして分かりづらいからというのと、単純にもう少し五條と話をしてみたくて修の方から声をかけた。
「うーん、どうだろう。俺は小学校からの持ち上がり組だからなぁ。 高校から入る奴は確かに優秀だけど」
「じゃ、すげー金持ちなのか。 どっちにしてもすごいな」
体育館へと続く渡り廊下を並んで歩きながら、修は賞賛の眼差しを向けた。
せっかくの昼休みだが寒さが厳しいため生徒達は暖房の効いた教室に籠っているんだろう。廊下にもグラウンドにも人はまばらだった。
育ちが良さそうだとは感じていたけど、小学校からK大附属とは筋金入りのお坊ちゃんだ。本人は謙遜しているけど、頭だって良さそうだ。
となれば、当然気になるのは・・・
「なんで、こんな田舎の公立高校に転校なんかしてきたんだ? しかもあと1ヶ月で進級なのに」
小さい町だから転校生自体が滅多に来ないが、3月のこの時期っていうのは更に珍しい。
「うん。ちょっと事情があって」
五條は短く言って、視線を逸らすように目を伏せた。
気を悪くした風でもなさそうだが、あまり積極的に語りたい事情ではないらしい。修は空気を読んで、話題を変えた。
「部活は? なんか入んないの?」
修がそれ以上追求しなかったことに五條はほっとしたようで、僅かに表情が和らいだ。
「前の学校ではサッカーやってたけど、もういいかな。春から受験生になっちゃうし。 相沢は部活は?」
「俺はバスケ部。つーか、修でいいよ。 みんなそう呼ぶから、苗字で呼ばれんのって逆にくすぐったい」
苗字で呼ばれるのもくすぐったいが、こういう会話もこっぱずかしい。
ムズムズする首筋を押さえながら、修は早口に言った。
「わかった、修」
「おう」
修は照れをごまかすように、大きな声を返した。
体育館では何人かが食後の運動を楽しんでいるようで、はしゃいだ笑い声とバタバタと走り回る足音が漏れ聞こえてきていた。