スワロウテイル
普通に指す程度なんて言ってたけど、五條は結構な上級者だった。聞けば、小学校からやっているらしく経験年数は修より上だ。
結果は3戦して、1勝2敗。修の負けだ。
負けたけど、めちゃめちゃ嬉しくて修は上機嫌だった。
自分より強い対戦相手が見つかったのだ。嬉しくない筈がない。
バスケだと負けるのは嫌だが、何故か将棋だと負けるのがちっとも嫌じゃない。
悔しければ悔しい程、楽しいと思う。
「昔はさー、妹達とみちるも一緒にやってたんだけどさ。色気付いたのか、将棋なんてつまんないって全然やらなくなってさ」
母親が出してくれた市販のチョコ菓子をつまみながら修が言うと、五條はきょとんとした顔をしている。
「妹がいるのはさっき聞いたけど、みちるって‥‥弟?」
今度は修の方がきょとんとする番だ。
誰かにみちるの説明をすることなんて、今まであっただろうか。
だって、この町でみちるを知らない奴なんていないから。
「そっか、ごめん。五條、みちる知らないのか。 うちの学校で一番綺麗な女子だから、見ればわかると思う。うちの隣に住んでるんだ」
「あぁ、女の子なんだ。 修の好きな子なの?」
五條はからかうでもなく自然な感じでそんな事を言った。
「な‥‥なんで、そうなるんだよ⁉︎」
修は内心の動揺を悟られないよう、あえてクールを装って答える。
「だって、一番綺麗なんて随分きっぱりと言い切るからさ」
今度はちょっと茶化すような悪戯っぽい目を修に向けた。
「だって、本当に一番綺麗だし。そう言うのが一番わかりやすいから‥‥」
言いながら何だか恥ずかしくなってきて、声が尻すぼみになる。
そりゃ、みちるを知らない五條からしたら、自分の幼馴染をやたらと褒めてるように聞こえるよな。
それに、東京ならみちるくらいの美人は珍しくもなんともないのかもしれない。
「あぁ。もう、いーや。 近いうち、紹介するから」
焦って早口になる修を見て、五條はクスクスと笑っている。
みちるを紹介する・・・か。
「なんか変な感じだなぁ」
修はつぶやき、ポリポリと頬をかいた。
「ん?」
「いや、みちるってこの町では有名人なんだよ。あいつを知らない奴っていなくて、俺の方がみちるちゃんの隣の家の〜って説明される側だったからさ」
「あぁ」
修のつたない説明でも五條は言いたいことを察してくれたようだった。
「だから、みちるを紹介するって不思議な感じなんだ」
ずっと、みちるはみちるで、修はみちるの幼馴染だった。
だけど、五條にとっては逆なんだ。
五條はみちるを修の幼馴染として認識する。
不思議な気分だった。恥ずかしいような、でもちょっと嬉しいような・・。
結果は3戦して、1勝2敗。修の負けだ。
負けたけど、めちゃめちゃ嬉しくて修は上機嫌だった。
自分より強い対戦相手が見つかったのだ。嬉しくない筈がない。
バスケだと負けるのは嫌だが、何故か将棋だと負けるのがちっとも嫌じゃない。
悔しければ悔しい程、楽しいと思う。
「昔はさー、妹達とみちるも一緒にやってたんだけどさ。色気付いたのか、将棋なんてつまんないって全然やらなくなってさ」
母親が出してくれた市販のチョコ菓子をつまみながら修が言うと、五條はきょとんとした顔をしている。
「妹がいるのはさっき聞いたけど、みちるって‥‥弟?」
今度は修の方がきょとんとする番だ。
誰かにみちるの説明をすることなんて、今まであっただろうか。
だって、この町でみちるを知らない奴なんていないから。
「そっか、ごめん。五條、みちる知らないのか。 うちの学校で一番綺麗な女子だから、見ればわかると思う。うちの隣に住んでるんだ」
「あぁ、女の子なんだ。 修の好きな子なの?」
五條はからかうでもなく自然な感じでそんな事を言った。
「な‥‥なんで、そうなるんだよ⁉︎」
修は内心の動揺を悟られないよう、あえてクールを装って答える。
「だって、一番綺麗なんて随分きっぱりと言い切るからさ」
今度はちょっと茶化すような悪戯っぽい目を修に向けた。
「だって、本当に一番綺麗だし。そう言うのが一番わかりやすいから‥‥」
言いながら何だか恥ずかしくなってきて、声が尻すぼみになる。
そりゃ、みちるを知らない五條からしたら、自分の幼馴染をやたらと褒めてるように聞こえるよな。
それに、東京ならみちるくらいの美人は珍しくもなんともないのかもしれない。
「あぁ。もう、いーや。 近いうち、紹介するから」
焦って早口になる修を見て、五條はクスクスと笑っている。
みちるを紹介する・・・か。
「なんか変な感じだなぁ」
修はつぶやき、ポリポリと頬をかいた。
「ん?」
「いや、みちるってこの町では有名人なんだよ。あいつを知らない奴っていなくて、俺の方がみちるちゃんの隣の家の〜って説明される側だったからさ」
「あぁ」
修のつたない説明でも五條は言いたいことを察してくれたようだった。
「だから、みちるを紹介するって不思議な感じなんだ」
ずっと、みちるはみちるで、修はみちるの幼馴染だった。
だけど、五條にとっては逆なんだ。
五條はみちるを修の幼馴染として認識する。
不思議な気分だった。恥ずかしいような、でもちょっと嬉しいような・・。