スワロウテイル
修が沙耶のものになったら、みちるはどんな顔をするんだろうーー。
そんな思いがどこかにあった。

沙耶とみちるが初めて会話をしたのは小学校6年生の時だった。
かわいいものが好きだった沙耶はみちると絶対に仲良くなりたいと思った。
積極的に話しかけた甲斐もあって、少し仲良くなれたかなと思い始めた頃のことだった。

通っていた小学校には春の舞台発表会というクラスごとに演劇や合唱を披露するという行事があった。 沙耶とみちるのクラスは演劇をすることに決まった。

演目は『白雪姫』

主役の白雪姫の衣装はとても綺麗で、沙耶はできることならあの衣装を着てみたいと思った。
だけど、クラス全員からの満場一致の推薦で白雪姫役はみちるに決定した。


『みちるちゃんなら、ものすごく可愛い白雪姫になるね。いいなぁ‥‥実は私もあの衣装着てみたかったんだよね』

トイレで二人きりになったとき、沙耶はぽつりと本音をもらしてしまった。
返事を求めていたわけじゃなかった。
それなのに、沙耶を突き落とすような一言をみちるは無邪気に言い放った。

『そうなの? じゃあ、沙耶ちゃんが白雪姫やったらいいよ。私あんまり興味ないし‥‥』

沙耶が憧れていた主役の座に、みちるは本当になんの興味もないのだ。
そして、クラス中が推薦してくれたことに対しても何の感情も抱いていない。
沙耶はみちるの傲慢さに腹を立て、残酷さに傷ついた。
ひどく惨めだった。

あれ以来ずっと、沙耶はみちるが嫌いだった。みちるはちっとも変わっていないから。あの子は今だって、傲慢で残酷だ。


だから、みちるにとって唯一の特別な存在である修を奪ってみたかった。
修をデートに誘ってみたのはそんなくだらない理由からだった。


大嫌いなみちると、沙耶をあっさり振った修がうまくいくなんて‥‥そんなの、認めない。絶対に許さない。

沙耶はふんと鼻を鳴らした。
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