スワロウテイル
「長洲は嫌な奴なんかじゃないよ。
確かにすっげー勝ち気なとこあるし、怒らせたら怖いけど‥‥しっかりしてて、仲間想いで、頼りになるマネージャーだよ。それは五條より俺の方がよく知ってる」
「え……私って、勝ち気? しっかりしてる?」
今度は沙耶がぽかんとする番だった。
天然で癒し系‥‥そういうキャラ設定だったはずなのに。
「うん。 ほんわかしてるように見えて、芯は強いよね。対戦チームの弱点分析とかすっごい鋭いとこついてくるし、練習中にダラけてる奴いると内心イライラしてるでしょ?俺、寺岡より長洲のが怖いもん。 けど、うちの部がまとまってんのって長洲のおかげだと思うしみんな頼りにしてるんだよ」
修はそう言って、邪気のない笑顔を見せた。そして、沙耶と五條の間に入ってきて二人の顔を見比べながら言った。
「はい、五條は長洲に謝る」
「‥‥ごめん。言い過ぎた」
五條は修の勢いに押されるように沙耶に頭を下げた。
「んじゃ、仲直りってことでいいよな」
修は今度は沙耶に向かって笑いかけた。
何だかよくわからないうちに仲直りをさせられてしまった。
沙耶はなにひとつ納得できていなかったけど、修の言葉に頭が混乱気味でこれ以上五条と喧嘩を続ける気力はなくなってしまっていた。
五條と言い争っている間にすっかり日が暮れてしまった。田んぼの中のあぜ道を三人並んで歩き出す。
まるで競い合うかのような烏と蛙の鳴き声だけが耳に響いていた。
修だけが別の方向へ行く分かれ道にさしかかったとき、おもむろに修が顔をあげて躊躇いがちに口を開いた。
「あのさ‥‥五條の噂、俺も知ってる。
つい最近だけど、クラスの奴から聞いたから」
五條は修に、沙耶は五條に視線を向けた。五條の瞳がかすかに不安で揺れたのを沙耶は見逃さなかった。
ーーふぅん。さっきは余裕ぶってたけど、修に嫌われるのは嫌なんだ。
修はなにを言うつもりなんだろう。
沙耶は今度は修に視線を移した。
修は真っすぐに五條を見ながら、言った。
「俺は五條はそんな事する奴じゃないと思ってる。けど、もし万が一、事実だったとしても‥‥俺は今の五條が好きだしそれは変わらない。
だから、いつか五條の口から真実を聞かせてよ」
沙耶には絶対言えない、青春ドラマの主人公みたいなくさい台詞。
だけど、修が口にすると不思議なくらいに違和感なくすっと心に入ってくる。
それは五條も同じだったようだ。
五條はふっと目を細めて、少し照れたような柔らかい笑顔を見せた。
その笑顔に嘘がないことは、沙耶にもわかった。
確かにすっげー勝ち気なとこあるし、怒らせたら怖いけど‥‥しっかりしてて、仲間想いで、頼りになるマネージャーだよ。それは五條より俺の方がよく知ってる」
「え……私って、勝ち気? しっかりしてる?」
今度は沙耶がぽかんとする番だった。
天然で癒し系‥‥そういうキャラ設定だったはずなのに。
「うん。 ほんわかしてるように見えて、芯は強いよね。対戦チームの弱点分析とかすっごい鋭いとこついてくるし、練習中にダラけてる奴いると内心イライラしてるでしょ?俺、寺岡より長洲のが怖いもん。 けど、うちの部がまとまってんのって長洲のおかげだと思うしみんな頼りにしてるんだよ」
修はそう言って、邪気のない笑顔を見せた。そして、沙耶と五條の間に入ってきて二人の顔を見比べながら言った。
「はい、五條は長洲に謝る」
「‥‥ごめん。言い過ぎた」
五條は修の勢いに押されるように沙耶に頭を下げた。
「んじゃ、仲直りってことでいいよな」
修は今度は沙耶に向かって笑いかけた。
何だかよくわからないうちに仲直りをさせられてしまった。
沙耶はなにひとつ納得できていなかったけど、修の言葉に頭が混乱気味でこれ以上五条と喧嘩を続ける気力はなくなってしまっていた。
五條と言い争っている間にすっかり日が暮れてしまった。田んぼの中のあぜ道を三人並んで歩き出す。
まるで競い合うかのような烏と蛙の鳴き声だけが耳に響いていた。
修だけが別の方向へ行く分かれ道にさしかかったとき、おもむろに修が顔をあげて躊躇いがちに口を開いた。
「あのさ‥‥五條の噂、俺も知ってる。
つい最近だけど、クラスの奴から聞いたから」
五條は修に、沙耶は五條に視線を向けた。五條の瞳がかすかに不安で揺れたのを沙耶は見逃さなかった。
ーーふぅん。さっきは余裕ぶってたけど、修に嫌われるのは嫌なんだ。
修はなにを言うつもりなんだろう。
沙耶は今度は修に視線を移した。
修は真っすぐに五條を見ながら、言った。
「俺は五條はそんな事する奴じゃないと思ってる。けど、もし万が一、事実だったとしても‥‥俺は今の五條が好きだしそれは変わらない。
だから、いつか五條の口から真実を聞かせてよ」
沙耶には絶対言えない、青春ドラマの主人公みたいなくさい台詞。
だけど、修が口にすると不思議なくらいに違和感なくすっと心に入ってくる。
それは五條も同じだったようだ。
五條はふっと目を細めて、少し照れたような柔らかい笑顔を見せた。
その笑顔に嘘がないことは、沙耶にもわかった。