スワロウテイル
母親の話をみちるがあまりしたがらないのはわかっているので、修は話を打ち切り作業に集中することにした。


修とみちるとは同じ歳で家が隣で、小学校から高校までずっと一緒だった。
だからといって、漫画やアニメでよくあるような仲良しの幼なじみというわけでもない。


こんな田舎だと小学校から高校までずっと一緒の奴は他にも何人もいるし、何よりみちるは特定の誰かと親しくする気はないようで一人で行動していることが多かった。

みちるが頼りにしているのは修ではなく修の母親だった。
不在がちなみちるの母親に代わって、教師をしている修の母親が子供の頃からあれこれと世話をやいていたからだ。

しょっちゅう顔を出すわけではないけど、今でも何か困ったことがあると修の母に相談しにうちにくる。


「クリスマス、なにかした?」

手伝わせているという申し訳なさからか、みちるの方から話題を振ってくれた。

「クリスマス? 24は木村と井上に誘われてカラオケ行ったな。 25は部活あったし、何もしてないや」

「イブに男三人でカラオケか。色気ないね」

みちるはくすっと口元を緩ませた。
笑顔と呼ぶにはあまりにも控えめなその表情に、修の胸は高鳴った。

笑うと、本当に可愛いのにな。

いつもそういう顔をしていればいいのに。そう修は思うのだけど、みちるにしてみれば余計なお世話なんだろう。


「 悪かったな。 そういうみちるは?」

「うん、家にいたよ」

みちるの表情は当たり前だと言わんばかりだ。

まぁ、予想通りの答えではあったけど。
みちるはこの容姿だから、とにかくもてる。 同じ学校の男共はもちろん、大学生や観光資源の何もないこの町にわざわざやってくる変わり者の旅行者にもよくナンパされている。

中には頭のおかしいような奴もいて、それは本当に気の毒だと思う。
けど、学校で一番かっこいいと言われる先輩からの告白もばっさりと断っているのは修には不可解だった。

告白なんてされた事ない修は想像するしかないけれど‥‥普通は嬉しいものじゃないのかな。
例え何とも思っていなかった相手でも、少しは意識したり迷ったりするものじゃないだろうか。

みちるはどんな男にも全く興味を示さなかった。
男に限らず同性の友達にもそれは同じなようで、みちるには親しい女友達もいなかった。
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