スワロウテイル
「けどな相沢。教師なんてなぁ、生徒はちっとも言うこと聞かないし、大して高給取りでもないし、部活なんて受け持った日には休み無しだし‥‥」

延々と愚痴が続くのかと思いきや、寺岡はそこで言葉をとめ、にかっと心底嬉しそうな笑顔を見せた。

「だけど、こうやってたま〜に、本当にたま〜にだけどな、給料の何十倍も価値のある嬉しい瞬間があるんだよ。だから、こんな歳になるまで続けちまったのかもなぁ」

「うん」

「お前は根本的に人間が好きだろ。そういう奴は教師に向いてる。天職を見つけたかもな。きっと、俺より良い教師になるよ」

「もちろん、そのつもりです」

修がそう言うと、寺岡はまた嬉しそうに目を細めた。

「長洲の看護師もいい選択だと思うぞ。
病気と向き合うには優しい人間だけじゃなくて、厳しい人間も必要だからな」

「‥‥その言い方、私が優しくないみたいじゃないですか」

職員室に明るい笑い声が響いた。


寺岡に別れを告げ、修と長洲は待ち合わせの場所へと向かう。




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