さよならはまたあとで
教室から溢れた話し声や笑い声は、廊下を満たし、学校中に広がった。
私と七瀬はたまに会話を交わしながら、それぞれの仕事に没頭した。
「優恵ちゃん!そろそろ時間かも」
七瀬の声に私は我に返った。
ヨーヨーを膨らます手を止めて、腕時計を覗き込む。
あと少しで渚のダンスが始まる時間だった。
私は教室の外にいた交代要員と入れ替わり、七瀬と一緒に体育館への道のりを急いだ。
7月の風はまだ少し湿気をはらんでいた。
浴衣の裾が、走るのに少し煩わしい。
「あちゃ、出遅れたかな」
七瀬は突然立ち止まった。
体育館は人で溢れ返っていた。
七瀬の横顔はなんだか少し悲しそうだった。
「渚、私たちに気づいてくれたらピースするって楽しみにしてたからね」
七瀬はそう言ってため息をついた。