さよならはまたあとで
「じゃ、行ってくるね!」
渚は夏の嵐のように去っていった。
渚はほとんど全てのダンスに駆り出されていた。
七瀬によると、渚は幼い頃からずっとダンスを習っているらしい。
ストリートダンスから、ソロのダンス。
一番会場が沸いたのは、フリフリの衣装に早着替えしてからのアイドルのダンスだった。
渚はアイドルからは程遠いイメージだったため、それが妙に七瀬のツボにハマったらしく、彼女は珍しく、大声でお腹を抱えて笑い続けた。
「だって一番似合ってないんだもん」
ダンス部のステージが終わり、渚が戻ってくると、七瀬はそう言い訳した。
七瀬の大笑いには、ステージ上の渚も気づいたらしく、問い詰めていたのだ。
「失礼だなぁ、私だってこれでも女の子だもんっ」
アイドルぽくポーズを決める渚に、また七瀬は笑い出した。
私もその様子に笑みをこぼす。
こういうのを青春っていうのかなぁと私はこの幸せをかみしめた。