さよならはまたあとで
私はずっとひとりなんかじゃなかった。
ずっとずっと、隣にいてくれる人がいた。
それなのに、燈太に埋もれて気づけないのは私だった。
そんな私をまた助けてくれた彼のことを思うと胸がちくちくと痛んだ。
タイミングよく現れて、いつの間にか消えてしまった私の夢を渡して去っていった彼の後ろ姿は、どこか寂しげに揺れていた。
私はスマホの画面を開くと、葛城に「終わったよ」と連絡した。
なかなか返ってこない返事を待ちながら、私は仮設のベンチに座って足をぶらぶらさせていた。
「あれ?優恵ちゃん?」
私はパッと顔を上げる。
この声…
予想通り、そこにいたのは渚と七瀬だった。
チョコバナナにカレー、かき氷まで、両手いっぱいに食べ物を抱えて驚いた顔でこちらを見ていた。
「芹崎君と一緒にいたんじゃないの?」
「あ、ちょっと、予定合わなくなって…」
「えぇー!!だったらもっと早く声かけてくれれば一緒に動いたのに!!」
渚は口を尖らせた。
「あ、その、葛城君といたんだけど…」
「葛城君なら…クラスの出し物の当番に戻ったよ?」
七瀬が遠慮がちにそう言った。
よくメールボックスを見ると、「ごめん!係に戻る!」とメールが一通届いていた。
「ねぇ、優恵ちゃん…んぁ、優恵!一緒に美味しいもの食べに行こ!」
渚が私に手を差し伸べようとする。
でも、両腕に抱え込んでいるもののおかげでそれは叶わなかった。