さよならはまたあとで
「え、なに、そうなの?…さっきの人、助けてくれた人だよね?」
にやにやとした笑みを顔いっぱいにたたえた渚が私の手を取る。
「いや…違くて…その、幼馴染だったらしくて…」
「だったらしくてって、優恵も面白いなぁ」
渚はケタケタ笑いながらそのまま私の手を引いて歩き出した。
細かいことは気にしないスタンスらしい。
七瀬もその隣に並ぶ。
「これからファッションショーのグランプリを発表します!」
眼鏡をかけた男子生徒がマイク越しに叫ぶ。
自然とグラウンドは静けさに包まれていった。
気がつけば空の半分は濃い碧で染まり、ちらほらと星も瞬き始めていた。
視界の端に、両手を祈るように組んで目を瞑る七瀬が見えた。
私の鼓動が微かに聞こえた。
いつもよりそれは早く刻まれる。
「グランプリは…」
隣で渚がコクリと喉を鳴らす。
「2年3組 日高優恵さんです!!」
わぁぁぁっとグラウンド中に歓声が満ち溢れた。
私は二人に促されて立ち上がるとそのまま前に出る。
もちろん、渚と七瀬と一緒に。
担当の生徒から、私の頭にティアラが載せられる。
賞状は、代表して七瀬が受け取った。
このあと、私たちは一言ずつコメントをして、壇上を降りた。
目が回るくらい刺激的な1日だった。
そんな1日も、もう終わろうとしている。