さよならはまたあとで
ふと気がつくと、私の顔を覗き込む明良と目が合った。
ちらりと見える眉尻が少し下がっている。
「優恵ぇ」
彼は情けない声で私の名前を呼ぶ。
「ん?」
と私は少し顔を上げる。
「もう、俺のこと好きになっちゃいなよ」
彼が少し恥ずかしそうに差し出したのはペンギンのマスコット。
こんなの、いつ買ってたんだろう。
差し出した私の手のひらにそっと載せられる蝶ネクタイをしたペンギン。
ふわふわとした暖かい感触が手のひらいっぱいに溢れる。
「俺ね、ずっと優恵のこと好きだったの」
相変わらず涙を溜め込んだような瞳は私のことを捉えて逃がさない。
「でもね、私、り…」
咄嗟に律太の名前を出そうとした私の口に、明良はそっと人差し指を立てた。
「いいの。俺ね、知ってるんだから。でもね、俺の方がきっと…絶対、優恵のこと笑顔にできるよ」