さよならはまたあとで

「そんなんでさぁ、優恵のこと幸せにできると思ってるの?何回も連絡もしないでほったらかして?」



律太の頬がオレンジ色に照らされる。



「優恵のこと、俺に譲ってくれない?
俺は絶対に泣かせないよ、優恵のこと」



律太が顔を上げた。

泣いているのかと思ったら、意外と恐い顔をして、俺のことを睨みつけていた。

ちょっと足が震える。

俺は元からそんなに強くないから…。

俺は睨み返しもせず、ちょっとだけ練習した不敵な笑みというやつを顔に浮かべてみせた。


律太はなにも言わず駅のホームを出て行った。


勝った


恋愛は勝ち負けじゃないのはよく分かってるのに、ついそう考えてしまう。

だって、俺はあの時も燈太に負けたわけで、燈太が死んでも、それは変わらなかった。

それなのにまたあいつに負けるだなんて、ごめんだった。


性格悪いなぁ、俺。


誰もいなくなったホームに言葉がぽろんと零れる。

それでも、「あきちゃん」から「渡井くん」へと、振り出しに戻ってしまったとしても、俺は絶対に諦めない。

日の光は相変わらず、世界をオレンジ色で包み込んでいた。
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