さよならはまたあとで
「…無理しなくていいのに」
気がつくと私はそんなことを言っていた。
「本当はもっと一緒に行きたい人がいるの、私知ってるから…その子と行きなよ」
ぽとりと線香花火の火の玉が地面に落ちる。
芝の中で燻りながら、やがて赤い小さな光も消えていった。
私は空を見上げた。
キラキラと輝いていた星も、綺麗な三日月も、みんな雲に覆われてしまっている。
「無理ってなんだよ」
かろうじて、まだ冗談ぽさを残した口調で律太は言う。