さよならはまたあとで
「あいつさぁ」
明良は手の甲で両頬を拭った。
「守ったんだよ、轢かれそうになった小さい子をさ。突き飛ばして。
あっという間のことだったよ。
体が固まって動けない俺の脇を、走ってくんだもん。
突き飛ばされた子は無傷だったよ。」
ぐすっと鼻を鳴らす明良。
私は呆然とした。
燈太はただ死んだんじゃなかった。
燈太は最期まで誰かのために生きたんだ。
最期まで優しかったんだ。
そう思うと涙は溢れて溢れて止まらなかった。
明良も私もたくさん泣いた。