さよならはまたあとで
燈太
土曜日。
待ち合わせ場所には五分早く来たはずだが、ブランコには既に明良の姿があった。
彼は私のことを見つけると、「優恵だぁ」と嬉しそうに笑いながらふわりと立ち上がると、こちらへ近寄ってきた。
「明良が私と行きたいところって?」
そういえば、私はまだ、今日の行き先を聞いていない。
彼はむーっと少し悩む仕草をして、それから、
「燈太のところ」
と答えた。
「燈太のところって、あの公園じゃないの?」
「違うよ」
彼は眉を八の字にして笑う。
「優恵、燈太の家と燈太のお墓、行ったことないでしょう?」
確かにそうだ。
私は最近やっと燈太が死んだ公園に来れるようになったばかり。
そもそも燈太の家もお墓も知らない私は訪れる術もなかった。