さよならはまたあとで
「優恵はさ、」
向かいのホームをぼんやりと眺めていた私に律太が話しかける。
「優恵は、もし自殺するとしたらどうやって死ぬ?」
まるで明日の天気を聞くくらいの雰囲気だった。
律太の方に向き直ると、彼の顔にはちょっとした翳りが見えた気がした。
「あんまりよく考えたことないから分かんないや」
私はなるべく普通に、肩をすくめて笑って見せた。
そんな私に、彼は「そうだよね」と頷く。
「律太は?」
私は不自然にならないように聞き返した。
これを知っていれば、律太を助けるときの大きな手掛かりとなる。
「俺は、間違っても電車には飛び込まないかな。人に迷惑はかけたくないんだ」
私は自分の心に彼の言葉を一文字ずつ刻みつける。
「あと、首吊りも嫌だな。手首切るのも。痛そうだし……だから俺は、人気の無いところで飛び降りるかな」
律太が自殺についてこんなに考えていたのかと思うと、私はぞっとした。
こんなにも彼の思考が進んでいるということだ。
「そっかぁ」
私は曖昧な返事をして、遅れてくる電車を待った。