さよならはまたあとで
私と律太の妙な空気は、やってきた電車に吹き飛ばされた。
電車に揺られて1時間。
私たちは11月の風に吹かれて、下車した駅から徒歩5分の遊園地を目指す。
あんなに強かった日差しは、いつの間にか白く、青みを帯びた光となり、コンクリートの照り返しも全くなくなった。
今日は特に午後から冷え込むと天気予報で聞いたので、私は薄手のコートを羽織っていた。
律太もいつもよりは少し厚着でもふもふしていた。
電車から全体像が見えていた観覧車は、やがて下の方しか見えなくなった。
大きいものは近づけば近づくほど一部分しか見えなくなっていく。
私たちは他愛のない話をしながら1日自由に乗り物に乗れる『フリーパス』を買う列に並んだ。
「遊園地なんて、久しぶりだなぁ」
私はやっと買えたフリーパスを手首に巻きつけながら言った。
「俺もだよ、いつぶりだろう」
律太は嬉しそうににひひと笑う。
「なにに乗ろっか」
私と律太の声が重なる。
くすくすと顔を見合わせて笑う。
たまに吹きつける冷たい風が全く気にならないほど、私の体は熱くなっていた。