さよならはまたあとで

「あ、」


律太の顔が近づく。
緊張して、妙に体に力が入ってしまう。


「ソフトクリーム、ついてる」


律太は親指で私の口元を拭うと、そのままぺろっと舐める。
この状況を脳が理解していくほど、私の体温はどんどん上昇していく。
やかんならピーピー鳴ってしまっていただろう。


「あ、ありがと」


あっちの方を向いて少しぶっきらぼうな礼を言った。

日が短くなってきたのもあり、もうすでに空はオレンジ色に染まり始めていた。
天気予報通り、風もさらに冷たくなってきた。

ちらほらとイルミネーションがライトアップされ始める。
色とりどりに点滅を繰り返す光は赤く染まった木々の葉を照らす。
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