さよならはまたあとで
『そうしている間に、燈太は死んだ。
相変わらず、再婚相手の連れ子と、再婚相手との子供ばかり、父さんは可愛がった。
俺には自由な時間も、居場所もなかった。
だから、俺はいつか、必ず後悔させてやろうって思っていた。
俺が父さんのせいで苦しんでいたことを遺書に書いて死ねば、マスコミも警察も大騒ぎする。
そうすれば、俺みたいに自由な時間も居場所も奪われる。
もっと俺を大事にしてやればよかったって思わせたかったんだ。
あいつの人生を、めちゃくちゃにしてやりたかった。
そんなとき、進学先の高校で優恵に会ったときはすごく驚いた。
燈太からよく話を聞いていたから、一目で分かった。
でも、どこか様子が違った。
俺は、家ではないがしろにされていても、友達はいた。
ひとりぼっちでいる優恵が、自分より辛い境遇に置かれているように感じたんだ。
俺が最初、優恵に近づいたのは、自分より不幸な人間を近くに置いておきたかっただけだったんだ。
ほら、俺って最低な奴だから。
よくそんなこと思いついたもんだよな。
でもさ、優恵は変わってしまっていた。
燈太から聞いて知っている優恵ではなかった。
あとで優恵から、能力のこととか、燈太が死んでからのことを聞いて納得したよ。
そりゃ、人格も変わるわけだ。
まぁ、優恵と出会ってから、俺の人格も少しずつ変わっていったんだけどね。
そう、ここで三つ目。
優恵に伝えたかったこと。
俺はね、恥ずかしくて面と向かって言えなかったけど、
優恵のことが大好きだったんだ。』
私はぎゅっと下唇を噛む。