さよならはまたあとで
私は彼に貸す本を探し始めた。

この前、彼が買って読んだという本。

あの本は、燈太がいなくなってから初めて買った本だった。

切ない恋の話だった。

誰も幸せにならないし、結ばれない。

ただ、主人公が燈太によく似ていて、私は気がつくと、いつもこの本を手にとっていた。

もう何度も読んだ。

何度も何度も。

その本を読んでいる間は、燈太と一緒にいる気がして、切ない物語なのに、なぜか幸せだった。

あれは確か続編があった。

ヒロイン目線に書き直された話だった。

私は目当ての本を手に取ると、そっと抱きしめた。
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