さよならはまたあとで
「おはよう、あ、本」
私はカバンの中から昨日抱きしめた本を出して、律太に差し出した。
「ありがとう」
律太は嬉しそうに受け取ってくれた。
「続編なの、それ。律太君が読んだ本の」
「続編なんて、あったんだ」
彼は驚いた顔をする。
「題名も違うし、私も最初は別の話だと思った。でも、読んでみたら女の子目線の話だった」
「俺、絶対泣くな、これ。前のやつも泣いたもん」
「律太君も泣くの?」
「そりゃ泣くよ、感性が豊かだからね」
彼は泣いているかのような身振りをした。
「優恵ちゃんも泣いたの?」
私は頷く。
「あの睨みを利かす優恵ちゃんが泣いたんだったら、俺は号泣確実だな」
律太は冗談ぽく笑い、私はそんな彼を軽く叩いた。
「うるさい」って言いながら、笑いながら。