さよならはまたあとで

「おはよう、あ、本」


私はカバンの中から昨日抱きしめた本を出して、律太に差し出した。


「ありがとう」


律太は嬉しそうに受け取ってくれた。


「続編なの、それ。律太君が読んだ本の」


「続編なんて、あったんだ」


彼は驚いた顔をする。


「題名も違うし、私も最初は別の話だと思った。でも、読んでみたら女の子目線の話だった」


「俺、絶対泣くな、これ。前のやつも泣いたもん」


「律太君も泣くの?」


「そりゃ泣くよ、感性が豊かだからね」


彼は泣いているかのような身振りをした。


「優恵ちゃんも泣いたの?」


私は頷く。


「あの睨みを利かす優恵ちゃんが泣いたんだったら、俺は号泣確実だな」

律太は冗談ぽく笑い、私はそんな彼を軽く叩いた。
「うるさい」って言いながら、笑いながら。
< 70 / 256 >

この作品をシェア

pagetop