さよならはまたあとで

「最近、日高さん、よく笑うようになったよね」


クラスの中でも一際明るい女の子がそう言っているのが聞こえた。


「なんか、怖い印象だったけど、案外いい人なのかも。可愛いし」


もう一人の子がそう言う。


「今度出かける時誘ってみる?」


「そうだね、いいかも」


私はここまで聞いて、少しにやついてしまった。

やっぱり、人に誘われるのってすごく嬉しい。

そんな私を見て、律太も葛城も嬉しそうに笑っていた。

今まで人の死を知ることを避けてきた毎日。

でも、律太に話したあの日から。

律太の死を知ってしまったあの日から。

私は少しずつ、少しずつだけど、人の顔を見て話せるようになった。

それは律太が「全力で助けに行けばいい」と教えてくれたからだった。


私は今、変われているのだろうか。


あの忌々しい誘拐事件の前の私に、戻ってきているのだろうか。

一度変わってしまった人格を取り戻すことはできるのかな。
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