からっぽのトランク
離婚するかも知れないと、母親に告白めいた相談をした時は実家の台所だった。

母親の和子は白菜をざくざく切りながら
「出戻って来たって!あんたの面倒なんか
見る余裕なんて無いからね!」

白菜のざくざくと共に怒号が飛んだ。

「里花。。夫婦なんて嫌いじゃなきゃいいの。そんな大好きで夫婦やってる人なんて
いないんだから。

私なんてどうするのさ!」

和子は白菜をザルに上げながら自分の結婚生活がいかに惨めだったか話し出した。

里花はこの手の和子の話しは聞きあきていた。

浮気され暴力をふられお酒は毎晩で思いやりの無い和子の夫の話し。

そして里花の父親でもある話し。

「面倒見てなんて言ってないから。」

幼い頃から存在している像の形の爪楊枝入れに2.3本指しては抜いて里花は答えた。

「じゃあ!あんたに働けるっての?!
 今の旦那位に稼げるの?」

そう言いながらも和子の手は今度は器用に椎茸を切っていた。

離婚なんてやめなさいよ。の声を背に実家のドアを開けて

そして閉めた。
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