それを愛だというのなら


フミが言いたかったことはわかる。

まだ二年生と言っても、来年は皆受験生。

今年から準備を始めている子がほとんどで、夏休みは成績を上げるためにとっても重要な時期。

その時期を、出演費ももらえない劇の練習に使うなんてとんでもないと考える子がほとんどだろう。

代わりの子、簡単には見つからないだろうな~。

と、完全に他人事として考えていたら……。


「広瀬さん、お願い!」


何故か、文系クラスの女子に頭を下げられる私。

そう、彼女は例の文化祭の劇の演出。

何故か昼休みに文理クラスに乗り込んできて、私に劇の主役を頼みたいとやってきた。


「ど、どうして私なんですか」


演出の女の子は同じ学年だけど名前も知らない。当然、話したのもこれが初めて。


「ごめんなさい。広瀬さんは受験をしないんじゃないかって噂を聞いて」


髪の短いメガネの彼女は、正直にそう答える。

なるほど。病気の時に授業を休みまくっていたから、普通に進学は無理なんじゃないかと思われたか。

影でそんなことを言われていたというのは良い気はしない。


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