それを愛だというのなら
「呼んだか」
呼んだ呼んだ!
なんだ、呼んだら来てくれるのか。
「何の用だ」
「いや、用って言うか、ちょっと相談が……」
私はぽつぽつと、昨夜あったことを死神くんに話した。
死神くんは黒い顔をしぶーくして、私の話を黙って聞いていた。
「正直、迷いはじめちゃった」
「ほらみろ。契約を破棄して命を長らえさせろと言うんだろ。バカ者」
死神くんは黒いマントの中から黒いボードを取りだす。
最初に契約書にサインしたときのものだ。
「残念ながら、ペナルティなしで契約できる期間は過ぎてしまっている」
「えっ」
「お前の健康な時間は、もともとお前に与えられている一生分の生命力を元に作られている。今契約を破棄して元の体に戻ったとしても、元のような生活は送れない」
「どういうこと」
「今までの約一か月で、お前は一生分の生命力を前倒しして使ってしまっている。残りの人生は、少なくなった生命力でやっていかなきゃならない。体は前よりも弱くなる。寿命も少し短くなるだろう」