それを愛だというのなら


「ごめんね」


つぶやくと、お母さんが『ん?』とこちらを見て首をかしげる。


「また入院になっちゃって。職場との行き来、楽じゃないでしょ」


必要なものをそろえたり、着替えを運んだり、入院となれば家族の負担だって増える。


「ううん、大丈夫。楽勝よん」

「よんとかやめて。可愛くないから」


ふざけてウインクをする母の目じりが痛々しい。

ぶっきらぼうに返した私の言葉に、お母さんは笑った。

少し待っていると、入院する病棟の看護師さんが迎えに来た。

ああ、見たことある。何度も入院した消化器内科の看護師さんだ。


「おかえりー、瑞穂ちゃん」


ショートカットの看護師さんは、すっぴんでも綺麗な肌をした三十代と思われる女性。

スクラブと呼ばれる半袖の制服で、下は白いズボンを履いている。

スクラブには色々な色の種類があって、今日の看護師さんは紺色を着用していた。


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