それを愛だというのなら
「そんなことないよ」
風邪なんてひいてない。いたって健康だし。
『もう大丈夫なら、ちょっと顔見られないかな』
「えっ?」
『窓の外見て』
その瞬間気づいた、ドドドドというバイクのエンジン音。
まさか……。
ベッドから起きて立ち上がり、閉めていたカーテンの隙間から、道路の方をのぞくと。
「わあ」
いた。いたよ。
上はライダースジャケットを着ているけど、下は制服のズボン。
ミスマッチな服装のその人は、こちらを見上げて立っていた。
なんだか切なそうなその視線に、こちらの胸が苦しくなる。
『急でごめん。一瞬でいいから、出てこられないかな』
「……わかった」
髪は下ろしっぱなし、Tシャツにハーフ丈のジャージだけど、それ以外の返事が出てこなかった。
玄関を開けると、健斗は小さなビニール袋を提げてこちらに近寄ってくる。
「家の人は?」
「誰もいない」
それを確認すると、緊張したような顔の健斗が、ホッとしたように笑った。