それを愛だというのなら
「瑞穂!」
ガシャンと自転車が倒れる音に、健斗の声がかぶさった。
肩や肘に痛みを覚え、自分が地面に倒れたのだと悟る。
「終わった……」
「えっ?」
バイクを停めて私を抱き起そうとする健斗が、怪訝そうな顔で私を見た。
「奇跡が、終わったの」
キラキラと色鮮やかに輝いた、私と健斗の日々。
まるで、あの日見た花火のように一瞬だったけど、それでもたしかに、あったんだ。
奇跡のような、幸せな日々が。
健康になる前と同じように、裸眼での視界がぼやけていく。
目を閉じようとした瞬間、お腹の中が雑巾しぼりされているような、強烈な痛みを感じた。
「瑞穂、なあ瑞穂。どうしたんだ」
一瞬で吐き気を催し、健斗の前であるにもかかわらず、口から胃の中のものを吐き出してしまう。
それが終わって、やっと息ができるようになったと思ったら、足元にぬるりと湿った感触が。
「血……」
自分で確認するより先に、健斗が呟いた。