それを愛だというのなら


「それでいいです。って言うか、忙しいのにすみません。よろしくお願いします」

「いいよいいよ。好きな人の前では、綺麗でいたいもんね。じゃあ、あとで声をかけるからお部屋にいてね。あ、体ふきあげるから待ってて」

「はい。お願いします」


めんどうくさそうな顔は見せず、笑顔でうなずく看護師さん。

えらいなあ……。陰では「わがまま娘!」とか言ってるかもしれないけど、本人の前で態度に出さないだけすごい。さすがプロ。

コロコロと点滴台を転がしながら、昨日から移った大部屋へ帰る。

個室は重症の人が入ることが多く、昨日も他の病院から重症の緊急入院が来てしまったようで、安定してきた私に大部屋に移ってくれないかと、看護師長さんからオファーがあったんだ。

個室は入院費も高くなるし、別にいいやと承諾してしまったけれど、健斗が来てくれるなら、個室のままの方が良かったかも……。


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