それを愛だというのなら


「元の生活に戻っちゃったね」


お母さんが残念そうにそう言う。


「家に戻れるだけいいよ。長く安定させられるように、がんばるしかない」

「そうね……」


病院にいると、色々なものを見る。

今にも死にそうな顔色で運び込まれたおばあちゃんが、一週間くらいで元気になって帰る姿も見たし、つい最近まで看護師さんと笑顔で雑談していたおじさんが、急に亡くなって霊安室へ運ばれていくのも見た。

彼らがそれぞれどんな病気を抱えていたのかはわからないけど、この世は本当に、いつ誰がどんな状態になってしまうか、わからないものだなあと思う。

だって、ほら。

病院から自宅へ帰るまでに、みっつも葬儀場の前を通りかかる。

そのどこの駐車場も満車で、通夜だか葬儀だかが営まれている。いつ通っても、何もしていない日はほとんどない。

ということは、この狭い町でほぼ毎日、誰かが亡くなっているということだ。

それだけ、死ぬということはありふれていることなんだ。


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