それを愛だというのなら
初めは緊張していたけど、うちの家族に歓迎されているうちにだんだんと慣れた彼は、こうしてうちに来て一緒に勉強をするようになった。
もちろん健斗だって忙しい。学校がやっていた夏期講習の後は、夜中に塾に通いだしたらしいし、昼はときどき文化祭の劇の練習がある。なのに、空いた時間にこうして来てくれる。
「痩せたもんな。最初は驚くだろうけど、すぐに慣れるよ。世間なんてそんなもん」
「そだね」
まだ十代、同い年なのに世間とか言っちゃう健斗に笑う。
「劇の練習は順調?」
「どうだろ。やることはやってるつもりだけど、全然熱を感じない」
「熱?」
練習しているみんなに情熱とか熱気がないってこと?
首をかしげると、健斗はつまらなさそうに言った。
「瑞穂がいないと思うと、全然やる気しないってこと。俺の内側で『うまくなりたい』とか、『もっとこうしたい』って引っかかりみたいなものがまるでなくて」