それを愛だというのなら


面倒臭い検査なんてしなくていい。私はもう健康なの。どこも悪くないの!

そう叫びたかったけど、頭がおかしくなったと思われるといけないので、死神くんのことは黙っていることにした。

何食わぬ顔で検査を受け、その結果が出たのは、お昼過ぎのことだった。


「信じられない……」


深夜の病棟の面談室で、主治医が目をぱちぱちさせる。


「急な体重増加の件ですが、これはむくみではなく、脂肪と筋肉が急に増えたのだと言うしかありません。口からお尻まで、どの消化器官にも炎症の様子が見られない。それどころか、とても綺麗になっています」

「ええっ!」


お母さんも仰天の声を上げる。


「それってつまり……」

「何が原因かはわかりませんが、今の瑞穂さんは痩せ気味ではあるものの、全くの健康体と言っていいでしょう」


主治医の先生の言葉に息を飲んだお母さん。

目を見開いて口を押えたと思うと、彼女は急に泣きだした。


< 30 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop