それを愛だというのなら


「あ、ありがとうございます。先生、ありがとうございます……」

「いや、私は何も。奇跡としか言いようがありません。しかし油断はせず、しばらくは短い期間で定期検診をして様子を見ましょう」


そう言うと先生はあっさりと退院の許可を出してくれた。


「お世話になりましたー!」


荷物をまとめて、ナースステーションの前で見覚えのある看護師さんたちに手を振る。


「瑞穂ちゃん、良かったね」

「もう帰って来ちゃダメよ!」


初めて入院したのも、この病棟だった。

看護師さんは皆とっても良くしてくれたんだよなあ……。

私が生きるために手を尽くしてくれた人たち。

ありがとう。ごめんなさい。死んだらあの世でこの病院の宣伝、いっぱいするからねって……死んでからじゃ遅いか。

あの世のじいちゃんばあちゃんだって、もう病院に戻りたいとは思わないよね。


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