それを愛だというのなら
ふと吹いた夏の風が、彼の長い前髪を揺らす。
その色素の薄い茶色の瞳が、優しく笑っていた。
私はうなずき、そっと自分の手を差し出す。
きゅっと握られて、まるで胸の奥までつかまれたような気がして、くらりとめまいがしそう。
本当は、完治なんてとんでもない。
これは奇跡でも魔法でもないの。
期限のある、死神との契約。
でも、別にすごく好き同士でつきあうわけじゃないし……相手があっさりした人で良かったのかもしれない。
私のことを好きで好きでしょうがない人じゃ心配だもの。
私がいなくなったあと、それなりにショックは受けるだろうけど、時間と共に忘れてくれるような人じゃなきゃ。
こうして私は、健斗と付き合うことになったのだった。