それを愛だというのなら
夏休みは残された寿命で、ぎりぎり過ごせるはず。
こくりとうなずくと、水沢くんは私の頭をなでる。
「せっかく可愛かったのに、ぐしゃぐしゃになっちゃったな」
そんなこと言われたら、毎日ポニーテールしちゃうよ。
私って、単純だな。
可愛いなんて言われたら、素直に嬉しくなってしまう。
頬が熱くて、どうしようもない。
「本当にありがとう。じゃあ水沢くん、また明日学校で」
恥ずかしさを押し殺してそう言うと、水沢くんはちょっとムッとしたような表情を見せた。
そして、私の頬を両手で包む。
「瑞穂」
色素の薄い瞳が、私の目を覗き込む。
こ、これってもしかして~!
バクバクと激しく鳴る胸の音が、外まで聞こえそう。
目を閉じた方がいいの? そんなことを考えていると。
「健斗って、言ってみ」
「ふぇ?」
「俺だけ名前呼びとか、そんなの変だろ」
そ、そう言えば。
なんとなく恥ずかしいのもあって、ずっと水沢くんって呼んでたっけ。